不毛地帯 第5巻 (新潮文庫 や 5-44)山崎豊子 ¥ 820 在庫あり。 ★★★★ |
不毛地帯 第5巻 (新潮文... | |
| 引き込まれる物語であっただけに、あまりにあっけない最後に絶句しました。残念です。色々なことが中途半端なまま物語が突然幕を閉じました。不完全燃焼の一言です。社運と壱岐自身の進退をかけて挑んだ石油発掘事業で、壮大なドラマが生まれてきます。 その個人の人生やいくつもの商社、国内外の政治を巻き込むスケールの大きさに、商社と縁がない私は、ただただ圧倒されるばかりです。 すべてが終わると壱岐は、自分の原点に戻っていきます。とても納得がいくラストです。 と思うと同時に、こんなに強い人、誠実な人って、いるのだろうか、どうしたらこんなふうになれるのだろう…と思いました。 人間の精神的な強さと描く、傑作です。 前半に比べれば後半の石油編はいささかパワーダウン、石油掘削という題材がはたして小説に向くもののか、はたまた筆者が取り組むにふさわしいものなのかなど多くの読者が疑問を持ちつつ読了するとおもいます、「沈まぬ太陽」第3巻航空機事故編同様にエンジニアリング関連の話題を小説の中の消化するのは筆者の力を超えたものだと判断します、これがもし全盛期のF・フォーサイスならはるかに波乱万丈の掘削劇を面白く描写したで... | ||
不毛地帯 第4巻 (新潮文庫 や 5-43)山崎豊子 ¥ 780 在庫あり。 ★★★★★ |
不毛地帯 第4巻 (新潮文... | |
| 舞台は、国内自動車会社とアメリカの自動車会社との提携から、石油発掘へと移っていきます。 元軍人の壱岐は、戦争中軍事力で奪おうとし、結局それが手に入らなかったがために敗戦したという石油を、今度は平和的な方法で、日本の国益のために手に入れようと奔走します。 そのためには財閥商社や政治家など、立ちはだかる壁がいくつもあるのです… 3巻までと比べるとスピード感がなくなりますが、その分不透明な中東の石油ビジネスの不気味さととてつもない規模の大きさが伝わってくるようです。 それにしても、副社長の里井の、壱岐に対する嫉妬心のすさまじさは、女の私から見ても考えられないほど醜いです…なんとかなんないかな、このおっさん… | ||
不毛地帯 第3巻 (新潮文庫 や 5-42)山崎豊子 ¥ 820 在庫あり。 ★★★★★ |
不毛地帯 第3巻 (新潮文... | |
| レビュウ題のとおり、後半へ進めば進むほど主人公壱岐正はいったい誰と戦っているのか?という疑問が大きくなる、これはとりものなおさず壱岐のモデルとなった元大日本帝国陸軍中佐・大本営参謀の瀬島龍三の生涯そのものが放っている胡散臭さを小説化しても消すことができなかったからでしょう(第1巻の私のレビュウをぜひ参照されたし)、 物語の豪快な面白さに糊塗されて見落とされがちだが、作品中で見せる壱岐正の処世術が実に詭弁に満ちたものであり、つまり姑息・狡猾と陰口されても仕方がない面をたぶんに有していることを忘れてはいけないとおもう(絵に描いたうな悪役として登場する鮫島の処世のほうが納得できる読者もたくさんいるでしょう)、壱岐正の狡猾さはけっして「正義」や直江謙続がいうところの「義」などには目もくれない出世主義者特有のものともいえ、その人物の属する組織によっては組織の存続自体を危うくする危険極まりないものであることに気付くことも重要でしょう(瀬島龍三の狡猾さのためにいったいどれほどの日本人が犠牲になったかなど興味ある読者は類書をぜひ探られたし)、 山崎豊子が豪快な作風を開花させた白い巨塔や華麗なる一... | ||
不毛地帯 第2巻 (新潮文庫 や 5-41)山崎豊子 ¥ 780 在庫あり。 ★★★★★ |
不毛地帯 第2巻 (新潮文... | |
| 本巻では壱岐が、大門社長のたくらみで、一緒にアメリカに行き、戦前の同期であった川又と出会い、そこから防衛庁のFXに絡む商戦に巻き込まれていきます。また、壱岐の終生のライバルとなる鮫島も登場。こいつの商売の仕方があくどくて面白い! 本来、軍人時代の人脈を使った仕事はしないと誓った壱岐でしたが、国益を無視した戦闘機の選択を、金ほしさの政治家や官僚たちに左右されることに憤りを感じ、八面六臂の活躍をします。 後半では、一気に時間が7年後に移り、常務に昇進して社長直属の業務本部を統括する壱岐が第3時中東戦争に絡んだ商戦を展開していきます。 同じサラリーマンとしてすごいかっこいいし、何度逆境に陥っても不屈の精神で立ち上がる壱岐は凄いです。警察の取り調べを受けるシーンもかっこよかたったです。 蛇足ですが、本巻で新しく登場する人物のモデルは以下のようです。 東京商事 → 日商岩井 ラッキード社 → ロッキード社 グラント社 → グラマン社 鮫島辰三 → 海部八郎 原田航空幕僚長 → 源田実 貝塚官房長 → 海原治 大川一郎 → 河野一郎 久松清蔵 → 迫水久常 山城防... | ||
不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))山崎豊子 ¥ 860 在庫あり。 ★★★★★ |
不毛地帯 (第1巻) (新... | |
| 著者の小説は結構読んでましたが、本作はドラマを見て興味を持ち読みました。 1巻の内容は昭和20年〜31年までの期間で、8割がたがシベリアの抑留生活です。過酷という言葉でも表現しきれない凄まじい描写があります。 ドラマでは壱岐が部下に向かって 「極北の流刑地で囚人番号を捺され、地下数十メートルの暗黒の坑内で鶴嘴を持ち、11年間にわたって重労働を課せられた」 というセリフがありますが、1巻の内容はまさにこれです。 主人公壱岐の視点で描かれているのでシベリア以外の日本の政治動向などは一切情報がありません。なので抑留生活がなぜ終わったかという 点については曖昧です。 作者の描く人間ドラマは時代を超えた普遍性があり、エンターテイメントとしても十分面白いし、歴史を知るという点でも知識欲を満たしてくれます。自分もまさか30年も前に書かれた小説にこんなにはまるとは思いませんでした。 蛇足ですが1巻で登場する主要人物のモデルを紹介しておきます。 壱岐正 →瀬島龍三 大門一三社長 →越後正一 里井専務 →中村貞夫 秋津中将 →草場辰巳 谷川報道部長 →長谷川宇一 竹村参謀副長 →... | ||
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)山崎豊子 ¥ 620 在庫あり。 ★★★★ |
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇... | |
| 読み終えて実際のモデルとなった航空会社が事実上経営破たんしたことを 考え合わせると、著者の警鐘が何の意味もなかったのではないかと考えさせ られてしまいました。 経営破たんという現実から、過去をさかのぼってみるとその誤りがはっきり とわかるとおもいます。 現在マイ山崎豊子ブームです。「大地の子」を全巻読破してから、「沈まぬ太陽」、「華麗なる一族」、 「白い巨塔」と各一巻を購入し同時並行で読み進んでいます。通勤・移動時は楽しい読書タイムです。 どれも外れがないですね。とても女性の筆致とは思えない力強い文体と綿密な取材力に、いつも驚かされます。 さて、今回の「沈まぬ太陽」ですが、現在話題の日系航空会社が舞台ということで読み進めました。 1960年代から80年代が舞台ですが、現在とは組合の位置付けがずいぶんと違うなと感じました。 「全組合委一律の賃金アップ」というのは、現在は適切な要求ではないと思います。確かに、今回の物語の 舞台の企業と時代であれば、ボトムアップということで意義があったのでしょうが、現在では「優秀な社員」 「普通の社員」「頑張り・能力が足りない社員」と分けて報酬... | ||
沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)山崎豊子 ¥ 700 在庫あり。 ★★★★★ |
沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇... | |
| 同僚もいない、日本人も少ない、家族とも離れ一人アフリカの大地で すごすとはどのようなものであろうか? 自身の身に置き換えたときに主人公の孤独と苦悩がわかる気がする。現在の、JALの状態が予見できる小説です。 この企業風土があるため、改善不可能なのだと思います。戦後からの経済動向や活動などを官・民との係わり合いをうまく表現できていると思います。企業という組織は人間性を変えてしまう性質をもっているようです。一人ひとりと話せば、親切で優しい人であっても、組織の中に身をおくと平然と他人を陥れることができてしまいます。主人公は、労働組合の委員長として職を全うしたがために、企業という組織全体から攻撃をされてしまいます。カラチ、テヘラン、ナイロビ。海外出向は2年という規程を無視して人事は行われます。うさぎ跳び、という言い方を以前はしていました。会社側は辞めさせたい社員に転勤を繰り返し、自ら辞表を提出するのを待つわけです。国内でも、組合潰しの第二組合結成が会社主導で進められ、同じ組合の幹部達は徹底的な差別待遇が行われます。この話は、恐らく昭和40年代頃の日本の企業が共通して体験したものでしょう。... | ||
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)山崎豊子 ¥ 700 通常4〜5日以内に発送 ★★★★★ |
沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇... | |
| 航空機事故がいかに悲惨なものか、残されたものの悲しみは いかに深いかを著者は切々と訴えている。 アフリカ編会長室篇と異なり、御巣鷹山編は著者の被害者への 悲しみが深く伝わる本なっている。 事実が持つ重みはおおきい。日航ってこんな会社だった、こんな悲惨な事故があったとあらためて思い出させる作品。生存者がへリでつりあげられるシーンをちょうどテレビでリアルタイムで見た。 そのときには日航って労組が多くてごたごたしているという噂は聞いていた。生きているのが正直嫌になるときも生きているうちには何度かあるが、そういうとき、この本を読んで、生きたくても生きられなかった被害者の方々のことを思い、生きようといつも思う作品。半官半民の傘の元、人権蹂躙や長年の放漫体質が生じさせた史上最悪の航空機事故、犠牲者・ご遺族の悲しみを、主人公の目を通して痛烈に批判した傑作です。人間一人の人生を一ページに無理やり凝縮させると仮定しても、520ページの本を読み通すには大変な忍耐が必要です。あれから四半世紀を過ぎようとしている今でも、事故原因については数々の疑問点があり、その生々しさにくさい物には蓋をするような疑惑... | ||
沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)山崎豊子 ¥ 700 在庫あり。 ★★★★ |
沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(... | |
| 国民航空の腐敗構造が少しずつ明らかにされていく。 著者の創作部分が多いとおもわれるが、一方で実際に経営 破たんしてしまった会社をモデルとしているだけに、会社が 潜在的に持っていた問題点をあぶりだしているのであろう。 なんと魑魅魍魎の世界たることか。ホリエモンが獄中でこの本を貪り読んだと言う記事をみた。ホリエモンは企業の一社員の経験がないので何を感じたかしらないが、私は大企業に35年働いた。入社当時は赤狩りがあつたのを思い出した。私は年末JAL405便で貪り読んだ。客室乗務員に”およみになつていらっしゃるのね”と言われ何と言ってよいかしばしためらった。航空史上最悪の墜落事故を引き起こした国民航空建て直しのために関西繊維企業の会長に白羽の矢がたまちした。一人で乗り込んだ会長に突きつけられたのは、凡そこれまでの常識が通らない底なしの組織腐敗です。読み手は、ここで国見会長と同じ視点に立たれるのではないかと思います。この腐り果てた国民航空を何とかしなければ、という思いが国見会長に託されます。モデルは鐘紡の伊藤淳二氏。国見会長を抜擢した利根川首相は中曽根康弘氏。利根川首相の懐刀、龍崎氏は、... | ||
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)山崎豊子 ¥ 620 在庫あり。 ★★★★★ |
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(... | |
| 読み終えて思うのは、主人公の一貫した姿勢と、会社の腐敗した 構造という構図であるが、主人公対会社という構図の中で会長を正義感に もえる善人にしてしまったのは、単なる著者の関西びいきであろうか? 会長の紡績会社が本書で総会屋が書いたように粉飾決算で破たんしてしまった。 著者は紡績会社の破たんまで予測していたのであろうか。 まさに事実は小説より奇なりである。映画化で話題となったという理由で手に取った。 映画では御巣鷹山の事故が中心に取り上げられているが、本作は腐りきった企業体質と利権を巡る泥沼劇が中心であり、しかも本質は変わることなく生き続ける企業の姿が描かれている。 文庫版4,5巻の「会長室篇」は、外部から経営者を招くことで再生を目指すところから始まるが、抵抗勢力や政治家の思惑に振り回され結局好転することなく終わっていく。 折しも日本航空が会社更生法の適用を受けて京セラの稲盛会長が就任したばかりだが、物語の背景当時と似た構図である。 とはいえ、日本航空の置かれている状況は当時よりも厳しい。 今回は再生に向かうのか、それとも歴史は繰り返すのか、今後の動向が非常に気になるとこ... | ||
水木しげるの遠野物語 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)水木しげる ¥ 1,300 一時的に在庫切れですが、商品が入荷次第配送します。配送予定日がわかり次第Eメールにてお知らせします。商品の代金は発送時に請求いたします。 ★★★ |
水木しげるの遠野物語 (ビ... | |
| クレジットは「水木しげる」ですが、「新編ゲゲゲの鬼太郎」と同じく、水木プロの絵柄です。描線がこなれすぎ、展開がパターン化しています。水木巨匠独特の、意外な視点や突拍子もない解釈がありません。常識的に「遠野物語」を水木漫画風に書き起こしました、という作品です。何かにこだわった感じが全くありません。 こんなことを言うべきではないと思いますが、これ以上水木先生を金儲けの道具にしてほしくありません。 | ||
生きがいについて (神谷美恵子コレクション)神谷美恵子 ¥ 1,680 在庫あり。 ★★★★★ |
生きがいについて (神谷美... | |
| 一度通読して、困ったときに読む本です。 どこか現状を切り開くキーが書かれていると思います。 年間何冊も本を書きちらすような著述者にはない、確かな知性に裏付けられた内容と、 しっかりとした文体には好感を持てます。 何年も前に出版された本であり、専門的には違和感のある部分(心理学も進化していますから)もあります。が、それを上回る魅力が本書にはあります。 是非、ご一読を 「神谷美恵子コレクション」として新たな装丁で出された本です。日本が高度経済成長を経験し、わりと物質的・経済的に豊かになり、少し余裕が出てきた頃に書かれたました。内容については有名なので、詳しく触れる必要はないでしょう。 著者は「生きがい」という言葉のあいまいさと日本語的な余韻を含んだ、この言葉の翻訳のないことに触れることから叙述を始めています。そして、生きがいを求める心、生きがいの対象、生きがいを奪い去るもの、また生きがい喪失から新たな生きがいを見出すまでの過程を、自己を抑制した、しかし暖かな文章で綴っています。 体系的な構成の本ですが、無機的な研究書ではなく、著者が接した愛生園の人との交流が全体を貫いており、... | ||
遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)柳田国男 ¥ 500 在庫あり。 ★★★★★ |
遠野物語―付・遠野物語拾遺... | |
| 日本民俗学の古典として余りにも有名な作品である。文語で書かれた箇所は、今となっては読者を選んでしまうが、文句なしの名文であり、本書は優れた文学作品だとも言える。本書は、遠野の地で語り継がれてきた伝説を採集したもので、日本民俗学の端緒と言ってよい。中身自体は、単なる昔話の羅列であり、余りにも素朴で、やや退屈ですらあるが、かつての遠野の風俗や言語を巧みに伝えており、興味深い。私は本書の舞台の一つである早池峰山に登ったことがあるが、本書を読んでからこの地を訪れると、また違った風景が見えてくるに違いない。 遠野物語と遠野物語拾遺を合わせて299話の短編集、一話平均約400字。 遠野物語は、民間信仰、栄枯盛衰、山中での出来事、妖怪、動物、行事、昔話など素朴な話が集められている。みな懐かしい感じがし、お伽やグリム童話といった説話のような説教じみた堅苦しさはない。話からは間接的に当時の人々の考え方や習俗、道徳観が伝わってくる。古今の文化の変化を考えると興味深い。民俗学の重要な史料となっている事も頷ける。 拾遺は題名のごとく残りの雑多なものという感じである。たとえば、当時(明治から昭和初期)の... | ||
遠野物語 (集英社文庫)柳田国男 ¥ 540 在庫あり。 ★★★★★ |
遠野物語 (集英社文庫) | |
| 聞いた話を、「そのまま」に書く。 書き手の主観を悉く廃したその手法が、時代や業界が異なれば手抜きじゃないかと思われるこの手法こそが、金字塔の金字塔たる所以だろう。教訓めいた締めも、気の利いた落ちも無く、切り取られた映画の一場面のように記されていく不可思議な話は、その多くが「意味不明である」故にこそ、一層、異様な迫力をもって読む者の心を揺らす。 「貴重な史料」であるのはもはや当然。ここは、想像力を刺激する一級のエンタテイメントと評したい。『遠野物語』です。 『遠野物語』『女の咲顔』『涕泣史談』『雪国の春』『清光館哀史』『木綿以前の事』『酒の飲みようの変遷』を収録しています。 遠野物語は、岩手県遠野地方に古くから伝わっている伝説、民話、昔話などを収集したもの。 天狗、フツタチ、雪女、ザシキワラシといったものたちを、活き活きと描いています。 他の6編は、エッセイというには深く、論文というのは堅苦しくないですが、いずれも日本人の文化について考察した民俗学の文章です。 特に、「歴史は私などの見るところでは、単なる記憶の学ではなくて、必ずまた反省の学でなければならぬのである」という言葉が印象的... | ||
新・がん50人の勇気柳田邦男 ¥ 1,680 在庫あり。 ★★★★ |
新・がん50人の勇気 | |
| 期待して開きましたが、じっくり読むに値しないものでした。現場で働くものにとって、現場を知らないうわべだけのドキュメントに感じます。 患者さんの生や死の重みが、文章から伝わり切りません。 それにしても、この本で書かれている著名人の最期は、なぜこうも見事なのだろうか? 私は、1981年に出版されていた『ガン 50人の勇気』(文春文庫。以下、旧版と略)を読んでいて、かつ、このサイトで実際にレビューも書いているが、この本も旧版と同様に、ガンを宣告された著名人の最期を上手く描写していると言える。しかも、旧版よりも1人当たりのページ数が多くなっているので、より個人(故人)の人間性が詳しく分かる。 もちろん、登場する著名人は全て変更されているが、旧版と変わらないのは、ガンの宣告を受けた著名人の多くが、残された人生を有意義に過ごそうとしていることである。特に、ガンの場合は脳卒中や心筋梗塞などと違って、発病してから即、死に至ることは殆ど考えられない上、進行の早さによって自分の余命をある程度予測することが出来るため、必然的に自分の人生を振り返る余裕が生まれる。そのため、人生の最期を見事な形で締め括る... | ||
さぶ (新潮文庫)山本周五郎 ¥ 660 在庫あり。 ★★★★★ |
さぶ (新潮文庫) | |
| 先ず、「山本周五郎」先生の名を耳にしてご想像されるのは、多くの方々は『樅の木は残った』ではないでしょうか。私もご多聞に漏れず、『樅の〜』を思い浮かべた一人です。 然しながら、本作『さぶ』も、『樅の〜』に負けず劣らずの一級品と断言出来ます。 内容をご一読されると、間も無くお分かりになることと思いますが、表舞台の主人公は、三郎こと、「ぶ」の同輩である栄二で、それを陰で懸命に支え、支えられするのが、「さぶ」という流れで、お話は進みます。「さぶ」は、裏方役の主人公という設定と言っても、良いかも知れません。 二人は、表具師です。 その栄二が、云われ無き理由で、奉公先と馴染みの仕事先から咎を受け、遂には、二十三〜二十五歳のあしかけ三年間、かの、松平定信の「寛政の改革」時代に盛んであった『人足寄場』にて、艱難辛苦を味わいつつ、見事に逞しく成長する下りが出て来ます。 さて、ここでも、裏方「さぶ」や、栄二の(半ば)許婚の「おすえ」、栄二を恋い慕う、飲み屋の女中「おのぶ」が、陰日向となって、栄二の凝り固まった怨念の心を解きほぐそうと、懸命に奔走するのです。 周五郎先生の人間描写... | ||
人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)山田風太郎 ¥ 760 在庫あり。 ★★★★★ |
人間臨終図巻〈1〉 (徳間... | |
| 死ぬのは嫌だと思うためこの本を読んで欲しい。 風太老翁は、 多くの著名人の臨終の姿を書きながら 何度自分の死を思っただろうか。 理想的な死などあるわけはなく 死ぬのは嫌だと思うのみである。 死んでもいいなどとは思わないことである。 死を選ぶ人のことに思いを致し、少なくとも、 自らは死を選ばないことである。こんな凄い人まで、空しい死に方をするんだなあと絶句。もう山田風太郎にはビックリですよ。生きる事と死ぬ事をここまで綺麗に、かつ知識的に羅列できるなんてもう900人にもおよぶ人間の生と死。見えないはずの分厚い壁に、圧倒的迫力で迫られた気分ですこれはワンピースとともに私の人生のバイブルになりそうですあるエンディングノートの巻末に「著名人死亡年齢一覧」が付録として付いており、それがあまりにも興味深く、人間の享年というものに関心を持った。そこで本書を読んだわけだが、非常に感動した。その人間の価値は死に様に表われると思った。この第1巻では、比較的、若死にした人が登場するが、本来はもっと生を得て歴史に跡を残すはずの人々の無念の最期に心を揺さぶられずはおられない。本書は、われら凡人が生き生きと... | ||
菊月夜 (新潮文庫)山本周五郎 ¥ 540 通常2〜5週間以内に発送 ★★★★★ |
菊月夜 (新潮文庫) | |
| 収録作品は以下の通り。 「其角と山賊と殿様」(昭和9年) 「柿」(昭和14年) 「花宵」(昭和17年) 「おもかげ」(昭和18年) 「菊月夜」(昭和19年) 「一領一筋」(昭和21年) 「蜆谷」(昭和22年) 「忍術千一夜」(昭和23年) 「留さんとその女」(昭和10年) 「蛮人」(昭和11年) どれも周五郎らしい作品で楽しい。表題作「菊月夜」は二人の女性の心の綾が綴られ感動的。「忍術千一夜」は、戯作調でエンタテインメントに徹した痛快読み物。楽しいです。 「留さんとその女」「蛮人」は、後の「青べか物語」に採録される原型となった作品。 | ||
青べか物語 (新潮文庫)山本周五郎 ¥ 540 通常2〜5週間以内に発送 ★★★★★ |
青べか物語 (新潮文庫) | |
| ディズニーランドがあり高級住宅街のある浦安のイメージから程遠い浦安(本書では浦糟)がここにあります。本書でもかかれていますがこの本は著者が6年間過ごした当時の浦安のノンフィクションで実に方言なども忠実に書かれています。そこに住む人々の狡猾でありながら純粋な人間性が非常になごましく、読みながらついつい笑ってしまう場面も多かったです。疲れたときに読むと何となく元気が出る本でした。周五郎翁の作品はどれも秀逸なのだけど、この作品は、「うらかす」の世界観がビビッドで、まるで西アフリカの秘境のような人間の精彩さがあって、旅好きの僕には、「行ってみたいなこんな街」と思わずにいられない場所なのです。自分自身が、べか船に乗っている姿を思い浮かべてみてしまいます。 浦安という名を耳にして、某遊園地の名以外に連想するものがある人 は希有ではなかろうか。浦安に行ったことのある人でも、街に足を踏み 入れたという人を探すのは一苦労だろう。しかし、まだ所々に漁村の風 情は残り、曲軒先生が住んでいて物語の下地となったであろう姿はない 訳ではない。物語に登場する場所を探すのも一興ではないだろうか。沖 の夢の城よりも確... | ||
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)山本周五郎 ¥ 620 在庫あり。 ★★★★★ |
樅ノ木は残った (中) (... | |
| 原田甲斐の自問自答は重くて深い。 「国のために、藩のため主人のため、また愛する者のために、自らすすんで死ぬ、ということは、侍の道徳としてだけつくられたものではなく、人間感情のもっとも純粋な燃焼の一つとして存在して来たし、今後も存在することだろう。――だがおれば好まない、・・・ たとえそれに意味があったとしても、できることなら「死」は避けるほうがいい。そういう死には犠牲の壮烈と美しさがあるかもしれないが、それでもなお、生きぬいてゆくことには、はるかに及ばないだろう。」 中巻の冒頭は、山男原田甲斐とくじびろ(鹿)との闘いから始まる。一方、幕府老中酒井雅楽頭と伊達兵部の密約を盾に、兵部の横暴ぶりは止まるところがない。雅楽頭と二度目にう場面は固唾をのまずにはいられない。物語が動きます。人の織り成す錦模様、絵柄はまだ見えませんが、幾重にも織られて厚さが増していきます。人は人それぞれの世界を持ち、懸命に生きているのです。登場人物のそれぞれが愛おしくなります。己を大切にするも粗末にするも己が決めること。また、対する人もまた己であること。忘れても思い出し、思い出し生きていきます。人々の間に不... | ||